たーさんブログ

自分の人生を再構築したがっているおっさんのつぶやき

プロレスラー高山善廣さんが頚髄損傷で救急搬送されたけど、どんな状況なんだろうか?

こんにちは。

 

ゴールデンウィークに入って、各地でいろんなイベントが行われていたようですが、その中にYahoo!ニュースでも取り上げられていたのは、プロレスラー高山善廣さんが大阪での試合中にワザをかけられて動けなくなって救急搬送されたというニュースでした。

 

かけられたワザについては私は詳しくないので正確な解説はできませんが、「前方回転エビ固め」というものだそうです。

動画で検索するとどうやらワザをかける方が、相手の上にかぶさるようにして前方回転しながら相手の胴をつかんだら、そのままの勢いで相手ともども回転しててエビ固めを決めるというもののようです。

(なんのこっちゃ)

今回の場合、高山さんは相手にワザをかけようとして回転した勢いで、そのまま逆さまに頭からマットに落下。そのまま失神して抑え込まれて負けたようなんです。

(本人がワザをかけにいったのか、かけられたのか、その辺りは不明です。すみません)

その後意識は回復するのですが、体は動けずに救急搬送されたそうです。搬送先の病院での診断は「頚髄損傷」および「変形性頚椎症」ということでした。

さて、私自身は現場にいたわけではないので、どのような状況だったか正確なことはわかりませんが、いろいろとその時の様子を調べてみると、次の3つの危険なポイントがありました。それぞれについて少し書いてみたいと思います。

①頭から落下して頭部を強打して失神した

脳梗塞の既往がある

③その後から体が動かなくなっていることおよび頚髄損傷および頚椎症という診断

①頭から落下して頭部を強打して失神した 

試合中の出来事なので、実際の状況についてはわかりません。本当に失神(意識消失)していたとしたら、それはやはり頭部打撲に伴い、脳震盪を起こして脳にダメージを負った可能性が高いと言えるでしょう。首から下のダメージでは意識がとぶようなことは可能性としては少なく、脳にそれなりの衝撃があった結果意識消失を起こしたと考えるのが妥当です。

こわいのは、脳震盪だけでなく脳挫傷、つまり脳から出血などを起こして脳にダメージを食らった状態や硬膜外血腫硬膜下血腫くも膜下出血など頭蓋骨が折れたり、脳の表面の血管から出血した状態を合併しているときです。出血の範囲が小さいうちは本人も脳震盪の衝撃から回復したら、受け答えができるようになるかもしれませんが、その後に出血の範囲が拡大して脳を圧迫するようになると一気に容態悪くなる可能性があります。

幸いにもすぐに総合病院に搬送されて、おそらくそこで脳の精査は行われていると思われますし、4日の受傷で頚椎専門の病院に転院したのが7日だったことを考えると、脳についてもしばらく様子をみていたんだろうと思います。

ゴールデンウィークだったこともあるかもしれませんが、、、)

脳梗塞の既往がある

脳梗塞の既往があることから、脳の余剰能力も十分とは言えないでしょう。脳梗塞は脳に栄養(血液)を送る血管が詰まったりすることで、脳に十分に血液が行かなくなり脳がダメージを受ける病気です。

奇跡的にも高山さんは、再びプロレスができる程度まで回復しましたが、それでも1か所の血管が脳梗塞を起こすほどボロボロだったということは、体のほかの血管(脳だけでなく心臓の血管も含めて)もかなりひどい状況だったことが予想されますので、全体的に脳の機能は血液の循環不足のためにダメージを受けていた可能性があります。

そんな中での今回の受傷は脳にとって「弱り目にたたり目」ということになります。ですので、診断が頚髄損傷および変形性頚椎症ということになって、どうしても頚椎(首)の方に目が行ってしまいがちですが、脳についてもしばらくは慎重に診ておいた方がいいでしょう。

 

③その後から体が動かなくなっていることおよび頚髄損傷および頚椎症という診断 

さて、今回発表された頚髄損傷について少し書かせていただきます。

「そもそも頚髄って何?」というところから始めたいと思います。

動物の場合は手足を動かしたりするときに脳で命令を出して、その信号は首のところから脊髄神経を通り、手足の末梢神経に伝わり手足の筋肉を動かします。一方手足が何か触れて感じたこと、あるいはどのように手足を動かしたかという感覚は再度末梢神経から脊髄神経に伝達され、脳に伝わるようになっています。つまり、脊髄神経がダメージを受けると「脳の命令が手足に伝わらなくなる(=麻痺)」「手足で物に触れてもその感覚が脳にしっかりと脳に伝わらない(=しびれ、感覚鈍麻等)」という状況になってしまうのです。

特に脊髄神経の首(頚椎)の部分を頚髄(椎の脊)と言いますが、その場所からは手の神経が分岐しており、さらに脊髄神経自体は下方に向かって足の神経、膀胱や肛門に行く神経へとのびています。神経はその上流(頭側)でダメージを受けると、その地点より下流(足側)で神経症状が出現するのです。ですので、頚髄損傷を受けた場合は、手足および膀胱、肛門の動きや感覚に問題が起きます。さらにダメージが大きいと、頚髄の頭に近いところでは横隔膜に行く神経もあり呼吸への影響も生じます。損傷の程度によっては、車椅子どころか寝たきり、さらには人工呼吸器をつなげたような重症な状態になり得るのです。

高山さんの場合は受傷直後、体が動かなかったという表現が用いられていました。つまり手も足も広範囲に脊髄神経がダメージを受けたことを意味しますが、これで即寝たきりになるというわけではありません。私たちの体では、傷を受けたところが直後から少しずつ腫れてきます。その腫れている間は機能が低下しますので、残った機能のきちんとした評価、つまり手足の動きがどうかとかは腫れが治まってくる数週間先になります。腫れがひいてきたところで、著しく回復する可能性もあります。ですので、今後ダメージを受けた脊髄神経が回復してくるかどうかを慎重に診ていかないといけません。

気になるのは「変形性頚椎症」という病名もついており、頚椎専門の病院に転院したということです。頚椎というのは、前述しましたように脊椎(背骨)の首の部分を言います。脳を守っているのが頭蓋骨であるように、背髄神経を守っているのは脊椎ですが、頭蓋骨は動かないのに対して、脊椎は体を動かすために1個1個が椎間板という軟骨でつながっており、そのおかげで自由に前かがみになったり後ろに反ったり、ひねったりすることができるのです。その脊椎の中を脊髄神経が通るようになっており、そこを脊柱管と言います。加齢や日ごろの首への負担から、この脊椎が変形したり、椎間板がとび出したり、あるいは支えている靭帯が肥厚したりすると脊柱管が狭くなり(脊柱管狭窄)、それにより徐々に脊髄神経が圧迫されるようになっていきます。これを頚椎症と言います。このようにして脊髄神経に何かが当たって少しずつ脊柱管が狭くなっていくと、それだけでしびれの症状がでたりするのですが、それが勢いよく脊髄神経を潰した場合には脊髄損傷となり、回復が困難な状況になってしまいます。

高山さんの場合はすでに脊柱管が狭くなっているくらい、頚椎が変形していたのでしょう。それで少しずつ脊髄神経のダメージが蓄積していった中で今回の受傷なので、回復には時間がかかりそうです。

病院を移ったのは、神経の回復環境をよくするために脊柱管を拡げる手術をすることも検討しているからなのかもしれません。

 

いずれにしても、高山さんの早期回復を祈りたいと思います。

また今後同じような事故が起きないように、事前にボクシング同様、頭や頚椎の検査をしておいた方がいいのではないかと思ってしまいます。

 

ということで、以上以前にそういう職場にいたことがあるたーさんでした(終)