こんにちは。
4月に入り、新しい年度を迎えました。
新しく物事に取り掛かることも、この時期多くなると思います。
このときに、大事なことは
「物事全体を大きくとらえる視点」
と
「物事を細かく細分化して居所的にとらえる視点」
の2つのものの見方をもつことだと思います。
マクロ(macro)とミクロ(micro)
よく「マクロとミクロ」という言い方をしますよね。
例えば、マクロ経済が、国のGDPとかの分析を指すのに対して、ミクロ経済は個人の消費についての研究を言います。
またマクロ医療が、疾患の治療あるいは予防において人の生活、仕事などに多岐にわたる項目について分析する分野であるのに対して、ミクロ医療は顕微鏡レベルからさらには遺伝子レベルでの治療を表します。
さらには、マクロの世界は地球全体や宇宙などの広大な領域を表すのに対して、ミクロの世界は微生物や細菌などの顕微鏡で観察する範囲となると言えば、わかりやすいイメージになるのでしょうか。
昔「ミクロキッズ」という映画があったのを何となく覚えています。
ありきたりの題材ですが、結構繰り返し観ていました。
同じように小さくなって人体内潜り込む映画としては、「インナースペース」という映画がありました。あの当時のメグ・ライアンはめちゃくちゃかわいかったなあ。
話は逸れましたが、今回言いたいのは
物事に取り掛かるときに、細かくとらえることは当然重要なのですが、全体像をしっかり把握することも必要ということです。
ミクロも大事ですが、ミクロにこだわるあまりにマクロで物を見ることを忘れてしまいやすいのです。
「木を見て森を見ず」
という言葉があります。
みなさんもご存じでしょうが、些細なことにこだわりすぎると、ものごとの本質や全体像を見落とすことがあるという意味です。
特に4月から職場に来た新人さんが、陥りやすいワナであります。
経験があまりない若手の場合、どうしても信用できるのは目の前の数値、データであったりします。その数値が異常を示していたら、それは当然問題なのですが、そこだけ注目してしまうと肝心なところで大きな問題を起こすことになるという話です。
血圧の変動を例に
例えば、患者の収縮期血圧(血圧の上の値)が160mmHgだったときに、血圧が高いと判断してすぐに降圧薬(血圧を下げる薬)を投与してしまうと、時に患者を危険な状態に陥れることになるかもしれません。
*血圧の正常範囲は、収縮期血圧/拡張期血圧:130/85未満です
高齢者だった場合は、もともと普段の血圧が高いことがあります。高い血圧の状態に脳の血管が慣れていたとしたら、血圧が下がることで循環不全となって脳梗塞を起こすことがあります。
あるいは、そもそも脳梗塞を起こしていた患者の場合は、逆に梗塞の進行を防止するために収縮期血圧を180-200mmHgまであえて上げることがあります。ですので、そのような患者に降圧薬をそのワンポイントだけで判断して投与するというのは医療ミスなのです。
かつて「アダラート(ニフェジピン)舌下錠」という薬は、患者の血圧が高いときに舌の下にカプセルの中身を滴下すると、劇的に血圧が下がるという効果がありました。ただ、その効果があまりにも強すぎたために、脳や心臓などの血管に良くないということで投与禁忌になってしまいました。これは2001年くらいの話ですが、血圧を下げすぎるのは逆に非常に危険なのです。
このようにその瞬間の血圧の値のみを見てしまって、患者の以前の経過をないがしろにすることで、場合によっては取り返しのつかないことにまで発展しうることがあります。
外来での血圧の値
外来をやっていると、
「血圧が高かったのですが、大丈夫ですか?」
という質問を受けることがあります。
だいたい収縮期血圧が150-160mmHgの場合が多いのですが、
基本的には血圧の上昇に伴うほかの症状がなく、また普段の血圧が高くなければ心配はいらないと説明しています。
まず「頭の中で出血したのではないか、あるいはするのではないか」と心配される方がいらっしゃいます。
もし、激しい頭痛に伴い、手足の動きの低下や呂律障害が出現したならば、それはすぐに脳のCTを撮りましょう。つまり、病院に来てください。
脳出血を起こしている可能性があります。
ただし、たいていそのような急を要する場合は、血圧はもっと高くなります。
また普段の生活で、びっくりしたり緊張したりする場合には血圧がこれくらいは変動することがザラです。朝か夕方か、寝起きかどうか、寒さや運動前後などで血圧は変動するのが普通で、常に同じ値ではありません。
またこのまま放置すると、高血圧になるのではないかと心配される方もいらっしゃいます。
例えば、毎日朝夜の2回、定期的に自宅で血圧を測定して、それでいつも平均してこの値だった場合は、血管に負担がかかることになります。そこからいろいろな病気に発展することがありますので、この場合は高血圧として、きちんと降圧薬を飲むべきです。
しかし、自宅での血圧が正常範囲内だったならば、このときは血圧がたまたま高かっただけである可能性があります。特に病院に来ると、「白衣高血圧症」と言って、緊張して白衣を見ただけで血圧が上がる方もいます。ですので、血圧もワンポイントだけでなくその前の血圧の変動、それも普段過ごしている自宅での血圧の値がどうなのかが非常に大切になってきます。
全体を把握することの大切さ
今回は血圧を例に挙げてみましたが、このように医療の世界でも、またそれ以外の世界でも細かいデータを分析することは大事なのですが、時間的空間的全体像を見ることも非常に大切なのです。特に緊急時にそういうワナに陥りやすいので、あまり時間がないのもわかりますが、ほんの一瞬物事を全体的に俯瞰することを忘れないようにしてほしいと思います。
みなさんも健康に注意してください。
以上たーさんでした(終わり)
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