こんにちは。
8月に入ると、夏の高校野球が始まる。
阪神タイガースも地元甲子園が使えなくなるので、長期ロードに出ることになる。
やはり、地元であの大声援を受けて、敵を迎え撃つことができないというのは
阪神タイガースにとってはかなり不利というべきだろう。
まあ、それ以上に毎年甲子園で熱戦が繰り広げられ、さまざまなドラマが生まれる。
私たちも自分の母校でもないのに、いつの間にかどこかしらのにわかファンになって
選手を応援している。
高校野球の魅力の一つなのだろう。
さて、今年は甲子園での高校野球が始まる前の予選で一つのドラマがあった。
ドラマというよりも、さまざまな議論を呼ぶ出来事というべきかもしれない。
岩手大会の決勝戦。
高校史上最速の球速を誇った佐々木投手。
163km/hというのは、あの大谷投手よりも速い。
当然、彼がいる大船渡高校は勝ち上がって、甲子園に一番近いところにいるだろうと
思われていた。
しかし、花巻東高校との決勝戦、彼の登板はなかった。エースで4番でもある彼は
投手としての当番もなければ、バッターとしての出番もなかった。
「いったい何で?」
誰もがそう思ったであろう。
納得のいかなかった人たちは、高校に苦情の電話をいれたらしい。
まあ、当然であろう。地元の人たちにとっては、誇りをもって甲子園に送り出して
いきたかっただろうし、町としても甲子園に行ったということになれば、
昨年の金足農業高校のように注目されることになる。
マスコミやにわかファンが町にワンサカくるようになり、町もそういう意味では
経済的に潤うからである。
しかし、彼は決勝戦はずっとベンチだった。
なぜなのか?
真相はたぶん本人と監督しか知らない。
ちょっと前に、準決勝前から彼は肘に違和感を感じていたと医療班に訴えていたという
報道があった。準決勝前というのは、あの延長戦を戦って194球を投げた試合の後である。それだけの球数を投げていれば、なんらかの不調をきたしてもおかしくはないだろう。
ただ、彼はその前には2試合しか出場していない。1試合目の2回戦は19球のみ、3回戦は93球。そして、その後194球を投げて、準々決勝は登板をしていない。
そして、一関工高校との準決勝で129球を投げている。やはり、194球、129球と数日の間で300球以上を投げているというのは、厳しい。
これで、決勝戦も連投するとなると、故障してしまう可能性が高くなる。そうすると、彼の将来も残念な結果になってしまう。
肘に違和感を抱えていたのであれば、決勝戦で出れなかったのは仕方がないし、投げさせなかった監督も立派だと思う。
しかし、その後のニュースで、その医療班から、全くそのような訴えはなく、彼自身どこも痛いところとかなかった、投げれる状態だったという証言が出たから、また面倒なことになってきた。
じゃあ、彼はなんで試合に出なかったのだろうか?
投げれる状態にあったというのであれば、試合に出させてあげればよかったではないか?
おそらく高校に苦情を入れた人たちは、そういう意見だったんだろう。
一般的には当然そのように思ってしまう。
佐々木投手は、全力で投げるピッチャーである。
打たせてアウトカウントをとるというよりは、三振をとりに行く投手なのである。
打たせてとるのであれば、1球や2球でバッターをしとめることができるのに、三振だと最低3球を要する。
プロ野球では省エネ投法を実行するピッチャーはいる。9回を投げて100球未満で勝ち投手になる選手もいる。あるいは100球を超えた時点で、投手交代することも今は普通である。
しかし、高校野球ではなかなか後に続くピッチャーがいないこともあり、連投で球数も途方もない数字になることがよくある。
ちなみに昨年甲子園を沸かせた吉田輝星投手の場合は、878球(歴代2位)。
(自分の場合は20球程度キャッチボールしただけで、もう肩で息をしている。)
大会中は予選と言えども、選手の体内にはアドレナリンが出まくっている。
そんな状態では、多少の痛みなんてあまり気になっていないことが多い。
もし、痛みを感じていたとしても、よっぽどの怪我でない限り「痛いから、無理です」とは言えない。
今回の決勝前までに最初の数試合は少なかったとは言え、決勝までの数日間で300球以上投げていた。それに三振をたくさん奪う投げ方をしていたので、かなり全力に近い投球なのであろう。
多少肘などの関節に違和感があっても、甲子園目の前にしたら痛くても投げてしまうのは当然だし、相手が花巻東高校であることを考えると、そう簡単には打ち損じないだろう。
投球数はとてつもないことになることは、自ずと予想された。
さらには、それだけの球数を投げても、負ける可能性はそれなりにあると監督は考えていたのであろう。
であれば、佐々木投手が故障して、さらには試合も負けてさんざんな目にあうよりも、
佐々木投手を将来のために温存して、決勝戦はほかの選手に託した方がいいと判断したのでしょう。
そう考えたのであれば、大船渡高校の監督は、物事を冷静に分析する、慎重な監督と言える。そして、甲子園という目の前の目標にとらわれずに、佐々木投手の将来のことを考えているすごく立派な監督なのだろう。
普通、監督の立場であれば甲子園に出場したということになれば箔がつく。
しかし、それを第一とせずに、佐々木投手を第一に考えて決断をしたというのは英断と言わざるを得ない。
甲子園で彼を観ることができなかったのは残念であるし、実際に大舞台での彼の真価をみたかったのも事実である。
しかし、これだけの逸材を、将来プロ野球で、さらにはメジャーリーグでみることがいつの日かできるのならば、私たちが大船渡高校の監督に感謝する日がくるかもしれない。
そして、監督が彼の家族のことも考えて、今回そういう結論を出したのであれば、感動秘話として語り継がれる物語になるかもしれない。
何が真相なのか。
佐々木投手の本当の気持ちはどうだったのか。
監督の判断の決め手は。
すぐにではなくても、数年後にはなんとなく明らかになるであろう。
今私たちができることは、佐々木投手だけでなく立派に戦った高校生たちをたたえ、一旦彼らをそっとしておいてあげるのがいいのでは。
もうすぐ甲子園。
今年はどんなドラマが見られるのだろうか。
以上たーさんでした。