物を造る業界では、
最終的に当初の目的としていた物としてできあがった主産物に対して、
その生成の過程で造られた、より価値の低い物を副産物と言う。
(必ずしも価値が低いとは限らないが...)
豆腐とおからの関係
たとえば、豆腐を作っていく過程で、その途中でつくられるのがおからである。
当初目的としていた豆腐に比べると価値が低い物になってしまうが、決して無用なものではない。
ダイエッターにとっては必需品ともいうべきもので、立派な健康食品なのだ。
その昔、おそらく最初の頃は、できてきたおからを片っ端から捨てていたに違いない。
何しろ、目的は豆腐を作ることなのだから。
しかし、そのうちに誰かが、それも食べることができて、なお体にいいものであると気づいたのだろう。
今では豆腐屋さんにいくと、それまでも値札を貼られて売られている。
もちろん、気前よく、ただでくれるところもあるが。
目標とその途中に達成したこと
この関係は物においてのみ成り立つ話ではない。
物事を成し遂げようと目標を定めて、それに向かって邁進していく中で、
気づいたら何かを生み出していることが時々ある。
そして、それに気づくこともあるが、気づかないこともある。
あるいは、気づいても私たちはそれを有効活用できていない、もしくは次のステップにつなぐことができていない。
当初の目標を主産物と例えれば、その途中で達成して得たものを副産物と呼ぶべきなのだろうか。
言えることはその副産物と言うべきものは、決して価値の低いものではない。
豆腐の場合のおから、あるいはそれ以上に価値のあるもの、自分にとって武器となり得るものである。
英語を勉強する場合
英語を勉強するにあたり、
「英語でTOEIC 900点をめざす」
という目標を定めたとする。
仮に、日々英単語を覚え、文法や言い回しを勉強し、耳で英会話を聞き取れるようになって、最終的に目標を達成したとする。
おそらく、その時点では、ある程度英語の論文は読めるようになっているだろうし、ある程度はネイティブと会話ができるようになっていると考える。
さらに、英語力を活かしてビジネスに活用することもできるわけだ。
これらは、主産物の延長にあるものであろう。
一方で、自分の英語の勉強の仕方が間違っていなかったとして、ほかの言語を学び始めることもできる。
また、語学の勉強の仕方をスキルとして身につけたことで、そのノウハウをアウトプットすることで、「語学勉強」というジャンルでビジネス展開できるわけだ。
これらは、副産物として考えられる。
主産物の延長については、容易にすぐに気づく。
しかし、後半に挙げたものについては気づかないと、それを有効活用できない。
ひょっとしたら、英語を勉強して活用したで終わってしまうかもしれない。
副産物がニッチなものであれば、その価値は高い
意外に調べてみると、すでに誰かが先にやっていることもよくあること。
その一方で、誰もやったことがないことであれば、非常に価値が高い。
あるいはただ単に、その深く調べるという行為を、自分がしていなかっただけかもしれない。
主産物を掘り下げて極めることがタテの動きであれば、その副産物についての自分の知識を広げてスキルの幅を大きくするはヨコの動きである。
自分の専攻している分野外の本を読んだり、異業種と連携したりするのも、副産物への気づきの第一歩である。
新庄選手の話
さて、先日の新庄の話に強引に戻すが、
彼は目標である日本プロ野球復帰を達成できなかった。
それはファンからしたら、それは非常に残念なことである。
しかし、頭のいい彼はおそらくそれだけに終わらないような気がする。
もちろん、メジャーリーグに挑戦するとか、独立リーグで1年間がんばって来年のトライアウトに再挑戦するとか、そういう話もあるだろうが、まあ無理な話だろう。
(独立リーグは可能性としてあるだろうが、彼自身は自分の野球は終わったと宣言している)
彼が今回のプロ野球復帰をめざすということが主産物だったら、その過程で得たもの、つまり副産物って何だったんだろうと、私なりに考えてみた。
①健康、体力・筋力、そして体型
もともとそれほどたるんだ生活を送っていたわけではなかった。
彼はバリ島でモトクロスとかもやっていたとか。
もちろん、インスタグラムでプロ野球をめざす宣言をしたときでも、それなりに体型は整っていた。
決して不摂生な生活を送っていたわけではないと思われる。
しかし、宣言後、彼はものすごいストイックに体を鍛え始めた。
実際トライアウトでちょっと前までプロで投げていたピッチャーの球を打ち返しているくらいである。
バットを振る腕力およびそれを支える上半身、さらにはふんばるための下半身をしっかり鍛えないとそれはできないだろう。
当たり前だが、三段腹のオッサンよりも全然健康な肉体と体力を手に入れたことは確かだ。
さらに、筋力で覆われた体は、もともとの恵まれた身長に加え、体に素晴らしいシルエットに作り上げた。
それを活かして、ツイートなんかをみると、すでに某ブランドのモデルのような仕事もしている。
②野球の技術(スキル)と指導
今回トライアウトに際して、もともとの師匠である柏原元阪神コーチや青山学院大学陸上部の原監督、それから専属トレーナーらと行動を共にしていた。
昔のような若い体ではない。
自分の体を作っていくために、いろいろと試行錯誤をしていたはずだ。
彼自身も、しっかり自分の体やトレーニングの知識を持っていたと思うが、
周りのアドバイスにもきちんと耳を傾けていたようだ。
そこで得た知識は、今後自分が後輩を指導する際に、絶対に役に立つものであろう。
それを活かして、例えばパーソナルジムのトレーナーをやったりすることがあるかもしれない。
あるいは、プロが無理でも、どこかのアマチュアチームの監督やコーチをお願いされるかもしれない。
③テレビに出たり、本を書いたり
自分の存在が観客動員につながると、彼自身もアピールしていた。
それだけ多くの人が注目していた今回のトライアウト。
新庄選手のテレビへの露出は増えていたし、SNS界隈でも盛り上がっていた。
当然プロ野球選手になれなくても、周りが放っておくわけがない。
テレビ出演はもちろん、本の出版なども今後考えられるだろう。
それだけでなく、今回の注目度からすると、いわゆる広告塔として野球とは関係ないどこかのメーカーやブランドから声をかけられてもおかしくはないだろう。
まあ、このように今後のビジネスにつながるような副産物は、いっぱい得ることができたと考える。
(正直自分はこれぐらいしか思いつかなかったので、自分の創造性のなさにはつくづく嫌気がさす。)
果たして、新庄選手がこのように副産物についても考えながら、トライアウトを受けたのかどうかは定かではないが、実際はどうだろうか?
今後の彼の動向に注目である。
転んでもただでは起きないというのは、まさにこのことだろう。